今見られた絵はJ.Davidによって画かれたルーブル美術館所有の縦6.1メートル、横9.3メートルの大作「ナポレオンの戴冠式」です。ルーブルやベルサイユ宮殿、あるいは大塚国際美術館に行かれた方はきっとこの絵が印象に残っていることと思います。

 この絵について少し書かせていただきます。「そんなこと知ってるよ」と言われる方は読み飛ばして下さい。さて、この絵の左方に画かれている五人の女性は全部ナポレオンの妹たちです。行かれた方はご存じと思いますが、ベルサイユ宮殿にもこの絵と全く同じDavidの作品が飾られています。しかし、二枚の絵にはただ一カ所だけ異なる部分があるのです。

 それは、この五人の女性の中の左から二番目、ナポレオンの二番目の妹、ポーリーヌの衣装の色がベルサイユ宮殿の絵ではピンクなのです。

 その部分だけを拡大して見ました。大作であるにもかかわらず、たいへんな精密画であることもよく分かります。

 これは、ルーブル美術館のものがナポレオンに贈られたものであったのに対し、ベルサイユ宮殿にある絵はDavid自身が所蔵する目的で画いたものだったからだそうです。そして作者Davidはポーリーヌを秘かに愛していたのだそうです。

 しかしそんなことを大っぴらにすることは出来ません。そこで当時、同じ作品を二枚以上画く場合はどこかを変えて画くという習慣に従っただけなのだと言われて来ました。Davidはそんな習慣を上手に利用したのでしょうね。

 おかげで私たちはこのルーブル美術館最大級の名画をパリ旅行の際に二カ所で見ることが出来るのです。まだ行かれたことのない方は是非この話を思い出して二つの絵を比べながら眺めて下さい。日本の大塚国際美術館にあるものはルーブルにあるものの原寸大陶板複製です。

 陶板画といって馬鹿にしてはいけません。最近では、再現性抜群で、実物よりも水害、火災、光線、環境汚染、経年変化などに強いということで、ルーブル、プラード、エルミタージュ、ウフィッツイなど世界の有名美術館がこぞって陶板画作成に協力しています。

 数百年も前に海底に沈んだ貿易船などから引き上げられた陶器に画かれた色彩紋様などが今なお鮮やかな色彩を保っていることからも陶板画の確かな保存性が認められているのです。

 世界の美術館を廻る時間の無い方はぜひ一度徳島県にある大塚国際美術館に行って見て下さい。広々とした会場に1,000点以上の名画が集められたその規模に驚かれることでしょう。

 ポーリーヌの肖像画とジョゼフィーヌ皇后の部分写真とをご参考までに置かせて頂きました。皇后はナポレオンより8歳年上だった筈ですが、随分と若く画かれていますね。

 長くなるので省略しますが、この絵には実はまだまだたくさんの裏話が隠されているのだそうです。

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ジョゼフィーヌ皇后

 
ポーリーヌ

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