フォトエッセイ 残像の記録 9



小 雨 け ぶ る 針 江

 今回も前回につづいてびわ湖湖北西岸の生水(しょうず)の郷と呼ばれる針江の森の景観です。

 針江地区は170世帯が暮らす集落ですが、生活用水の全てに比良山系から湧き出る豊富で良質な伏流水が利用されています。年中12℃前後の軟水となって家々に湧きだす生水は各家庭で使われた後、コイ、オイカワ、タナゴ、ヨシノボリ、サワガニ、カワエビ、アユなどの豊富な淡水魚による浄化作用を経て、びわ湖に注ぎます。

 水が豊富なため、針江地区を囲むようにして美しい森と上流のない川が見られます。上流がないということは川の源流が全て山からしみ出る伏流によるものだからです。

  集落の中を巡る水路やその水を生活用水に利用したシステムは、農学者でもある現滋賀県知事・嘉田由紀子氏によって川端文化(かばたぶんか)と名付けられたと言われます。

 このような水の文化、美しい景色、地域の人々の自然と密着した生活ぶりを求めて今では日本だけでなく海外からも大勢の人が見に来られるようになりました。

 写真は二枚とも一昨年5月の保事協フォトクラブで開催した撮影会での写真です。そぼ降る雨が一層針江の森の風情を醸し出してくれました。森は小鳥たちの天国でもあります。
                       栗原 眞純

                                                 
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