フォトエッセイ 残像の記録 19



曽 爾 高 原

 曽爾(そに)高原は奈良県と三重県の県境に位置する曽爾村の一部です。平成14年に、全国の行ってみたい 歩いてみたい場所「遊歩百選」に選ばれた国定公園でもあります。

 運良く雲が適度にある晴れた日の撮影となりました。「空」の写真撮影では、この「雲が適度にある」ということが重要条件です。雲一つ無い快晴では個性的な写真は撮れません。

 巻積雲(うろこ雲)と積雲(わた雲)とが緑の 上を程よく覆っている所を狙いました。下の写真では空の大部が巻積雲で覆われたところと曽爾高原の名物である「すすき」を前面に出したものです。雲の形が刻々と変わるので飽きることなく撮影を楽しめました。

 ここ曽爾村は古来からの漆器生産地です。昔この地で、倭武皇子(やまとたけるのみこと)が猟をしていて大猪を見つけ、漆の樹液を先に塗った矢でとどめを刺したという伝説があります。

 樹液で皇子の手が黒く染まったので部下に樹液を集めさせ、物に塗ると美しく染まり、以来、漆が採れる曽爾村一帯が『漆部郷 ぬるべのさと』と呼ばれるようになりました。

 漆器を英語でjapanと言いますが、実際、福井県で出土した漆は 放射性炭素とDNA分析の結果、世界最古(12600年前)で日本固有の漆であることが確認されています。

                                        栗原 眞純
   


                     

                                                 
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